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A leaf in a bottle

とある精神疾患者の日常

妄想

障がい者の作業所に来るようになってからいろいろ知ったことがあります。主に精神の障がい者のことについてですが。私の通う作業所の精神障がい者のうち、一番多いのが統合失調症の人です。この病名があるだけで障がい者手帳2級が認められる重い精神疾患です。症状としては幻覚がよく知られています。幻聴や幻視、体感幻覚などいろいろありますが、要するに現実にないものをあるものと認識する症状です。

幻覚症状については薬である程度緩和できるようですが、日常的に起こる人もいて、幻覚と現実とのズレに苦しむこともあるみたいです。でもこういった人たちに割と多いのが、非現実的な妄想。ありえないことを本当のことだと信じている人が何人かいます。

例えば、とあるメジャーなバンドのボーカルの人と結婚して子供が生まれたとか。前世の記憶があって、自分は生まれ変わったとか。前の人生では結婚して子供がいたと懇切丁寧に説明されたときは思わず唸りました。他にも先祖の霊が自分に忠告をしてくるとか。霊能者だったらあり得るかもしれませんけど。そう簡単にそうだと納得するわけにはいきません。

バンドの人と結婚したと言う人はその妄想を本当のことだと言い張り、今でもその有名人との間に子供が二人いると信じています。妊娠してたのにおなかが大きくなってなかったと指摘しても、大きくならない人もいると平気で返してきます。そのことで他の人ともめたこともあります。でもどんなに諭しても反論しても決して妄想だと認めません。絶対に本当のことだと言い切ります。

こういうとき、統合失調症は難しい病気だと思います。幻覚があまりにも現実味を帯びていると、妄想だと言われてもそうだとは思えないのでしょう。寝ているとき色彩豊かな夢を見る人がいるように、頭の中でいろんな願望が入り交じったリアルな映像を見る人がいるようです。こういった妄想観念は本人がよりどころにしている信念と結びついていたりして、変えるのはとても難しいです。何度か説得しましたが、結局どの人も妄想だと納得しませんでした。

現実が生きにくいもので、そういったものから逃避したい気持ちは私も同じなのですが。現実と妄想の線引きができない人がいるということを、作業所に来て初めて知りました。こういった人たちはずっとその妄想に支えられて生きるのでしょうか。個人の自由なので、相手が折れるまで攻撃するというわけにもいきません。

私は妄想を持った人を結局どうにもしてあげられませんでしたが、それで良かったのかもしれません。その人の神話として存在するなら、無理に取り除かなくていいのかもしれません。とは言え、他の人の迷惑になるケースがあるのがちょっと困ったものです。