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A leaf in a bottle

とある精神疾患者の日常

ADHD的な人

書くことに困ってきたので、一人の人物をズームアップしてみます。今回はY成さんという50代の女性。彼女は一見するとどこが障がいか分からないくらい明るく活発な人です。気分次第で他人を傷つけたりすることもありません。以前「暴言が止まらない」で出てきたT和さんの被害者でもあります。

Y成さんは人柄がいいと思います。根がバカ正直とも思えるくらい、素直な人。ただ、彼女にも困った部分が多少なりとも存在します。それは注意力が散漫なこと。ADHD的な症状を見せるため、ADHDなのかと思ったりもしましたが、精神科ではうつ病と言われたと本人は言っています。

彼女は2つ以上のことを注意するのがかなり苦手です。人から何か頼まれてそちらに注意が移ってしまうと、今やっていることを忘れてしまいます。後でこれこれして、という言い方も難があります。言われたことを覚えていられないときがあるからです。

また、彼女には細かいところまで質の高い作業をすることができません。内職などでも仕上がりの良さに意識が向かないため、見映えが悪く雑というのは毎度のことです。どうもきれいに仕上げることよりも、単純に指定された作業を繰り返すことにしか注意が向いていないようです。

授産での調理作業の際、彼女は洗い物専門です。他の作業が覚えられないためです。調理のときには事細かい指示や説明がされますが、彼女はそれを覚えていられません。一度覚えたことも、次の授産のときには頭から抜けています。授産のたびにその都度説明をする場合もあります。

洗い物は彼女ができる唯一のポジションです。でも洗い物さえも、4隅をすみずみまできれいに洗えませんし、表を洗って裏を洗わずにすすいだり、肉の容器を間違えてたわしで若干こすっただけですすぎ桶に入れたり。

彼女は授産のたびに、何かしら注意を受けています。きれいに洗えていないという苦情も後を絶ちません。スポンジでこする場所もあまり意識しないせいか、同じところばかりで、汚れが落ちていないようです。スタッフがその都度説明します。

必要な場所に注意が向けられないというのは、苦しいだろうなと思います。本人は自分ができていないことを思い詰めることはありません。思い詰めていたら本格的なうつ症状が出て入院になると思います。忘れてしまい、意識しないでいられるからこそ次も授産に参加できるのです。

彼女は心のシャッターを閉じてしまっていて、外部のものが自分を傷つけないように頭を鈍化させてしまっているのかもしれません。何か心の作用はありそうですが、かと言って私には症状を和らげてあげることすらもできません。

本人は打たれ強いと思っている節もあるようですが。私はちょっと違うと思っています。Y成さんは、きっと無意識に心を守るようにしていて、本当は、ちょっとしたことでも折れてしまいそうな人なのだと思います。それを防ぐためには、外のものを認知しない方が都合がいいのではないでしょうか。

あるいは本当に発達障がいで、ADHDなのかもしれません。逆にADHDではなく精神疾患の一症状なのかもしれません。

とりあえず、Y成さんは明るく今日も作業所に来ていました。明日も、きっと来週も、ずっと。どんな支援がなされるべきなのか。スタッフの支援の様子を見て、少し考えました。